親のスマホ料金を見直したいのに、「メールアドレスが変わるのは困る」と言われて止まってしまうことがあります。
ドコモ、au、ソフトバンクのメールアドレスは、回線を解約したあとも有料の「キャリアメール持ち運び」サービスで残せます。料金は基本的に1メールアドレスあたり月額330円です。
毎月330円はかかりますが、通信プランの見直しで月に数千円下がるなら、メールアドレスを維持したままでも家計全体では安くなる可能性があります。長年使ったメールをいきなり捨てなくてよいため、乗り換えへの心理的なハードルも下がります。
ただし、注意したいことが2つあります。
- 回線を解約しただけではキャリアメールは残らない
- メールアドレスを持ち運べても、今までと同じメールアプリを使えるとは限らない
高齢の両親に代わって家族が手続きするなら、乗り換え前の準備からMNP当日、乗り換え後のメール受信までを順番に進めると、作業の抜けを防ぎやすくなります。
先に全体の流れをまとめると、次のとおりです。
- 今後メインにする、キャリアに依存しないメールアドレスを決める
- 重要なサービスの登録メールアドレスを少しずつ変更する
- キャリアのID、ログイン手段、4桁の暗証番号を確認する
- 乗り換え先を決めてMNPする
- 回線解約と同時、または解約したその日のうちにメール持ち運びを申し込む
- 持ち運んだメールを受信できるアプリを設定する
- 旧キャリアメールに届くサービスを見つけるたび、新しいアドレスへ変更する
キャリアメール持ち運びは「引っ越しの猶予期間」と考える
キャリアメール持ち運びを使えば、次のようなアドレスを回線解約後も利用できます。
@docomo.ne.jp@au.com、@ezweb.ne.jp@softbank.ne.jp、@i.softbank.jpなど
長年使ってきたメールアドレスには、銀行、クレジットカード、通販、保険、病院、自治体、知人との連絡など、本人も覚えていないサービスが紐づいていることがあります。すべてを一日で変更するのは現実的ではありません。
そこで、持ち運びサービスを「今後もキャリアメールを使い続けるためのもの」ではなく、「新しいメールアドレスへ安全に引っ越すための猶予期間」と考えます。
旧キャリアメールに何か届いたら、その都度、送信元サービスの登録先を新しいメールアドレスへ変更します。これを半年や1年かけて続け、重要なメールが届かなくなったところで持ち運びサービスを解約すれば、毎月330円の支払いも終わらせられます。
もちろん、本人がどうしても使い続けたい場合は、月額料金を払って維持する選択もできます。大切なのは、メールアドレスを失うのが怖いからという理由だけで、高い通信プランから動けない状態を避けることです。
乗り換え前にやっておく準備
MNPの手続きそのものより、時間がかかるのは事前準備です。特にメールアドレスの整理は、乗り換えの数週間前から始めると余裕があります。
新しいメインメールを1つ決める
まず、携帯電話会社を変えても使い続けられるメールアドレスを1つ決めます。候補は次のとおりです。
- AndroidやGoogleサービスを使っているならGmail
- iPhoneやMacを中心に使っているならiCloudメール
- WindowsパソコンやMicrosoft製品を使っているならOutlook.com
- Yahoo! JAPANを日常的に使っているならYahoo!メール
どれが絶対に正解というわけではありません。本人がすでに持っていて、家族がログインや復旧を手伝いやすいものを選びます。
メールサービスを選ぶときは、公式アプリがあることも重要です。最近はセキュリティ強化により、ウェブサイトへログインするパスワードと、外部メールアプリで使うパスワードが別になっていることがあります。提供元の公式アプリなら、複雑なメールサーバー設定をせずにログインできる場合が多く、機種変更後の復旧もしやすくなります。
ここで決めたメールを、今後の「本アドレス」にします。キャリアメールは、移行漏れを拾う旧アドレスという位置づけです。
重要なサービスから登録先を変更する
登録メールアドレスの変更は、乗り換え当日にまとめてやろうとすると終わりません。まずは重要度の高いものから変更します。
- 銀行、証券、クレジットカード
- 携帯電話会社以外の通信サービス
- Amazon、楽天市場などの通販
- 電気、ガス、水道などの生活インフラ
- 保険、病院、自治体関係
- Apple Account、Googleアカウント、Microsoftアカウント
- LINEなど、スマホで日常的に使うサービス
- パスワード再設定先になっているメールアドレス
メールの受信箱で「会員登録」「ご利用明細」「本人確認」「パスワード」「重要」などを検索すると、登録したことを忘れていたサービスを見つけやすくなります。
すべてを洗い出せなくても問題ありません。キャリアメールを持ち運んでおけば、乗り換え後に届いたメールを見ながら変更を続けられます。
キャリアのIDとログイン手段を確認する
メール持ち運びの申し込みには、乗り換え元キャリアのアカウントが必要です。
- ドコモ:dアカウント
- au:au ID
- ソフトバンク:SoftBank ID
契約中は、Wi-Fiを切ってキャリア回線からアクセスするだけで自動的に本人確認されることがあります。しかし、解約後はその回線認証を使えなくなり、IDとパスワードの入力を求められます。
解約前にWi-Fi接続など別の回線からログインし、IDとパスワードで入れることを実際に確認しておきましょう。「いつもログインできているから大丈夫」ではなく、手入力で試すのがポイントです。
パスワードが分からない場合は、契約回線でSMSを受け取れるうちに再設定します。契約時に決めた4桁の暗証番号を求められる場合もあるため、こちらも確認しておきます。
また、アカウントの連絡先やパスワード復旧先が、これから持ち運ぶキャリアメール自身になっていないか確認してください。可能なら、先ほど決めたGmailなどのキャリア非依存メールへ変更します。
各社の公式案内はこちらです。
支払いに使えるクレジットカードを用意する
他社へ乗り換えたあとにメール持ち運びを申し込む場合は、支払い用のクレジットカードを用意しておくと確実です。
同じ系列の料金プランへ移る場合など、通信料金との合算払いを選べるケースもあります。その場合は、通信料金を口座振替にしていれば、結果的に口座から支払えることがあります。ただし、乗り換え先や手続き方法で条件が変わるため、クレジットカードを準備したうえで公式画面の案内を確認するのが安全です。
MNPとメール持ち運びは同じ日に済ませる
3社とも、回線解約後に申し込める期限を設けています。おおむね解約後31日以内ですが、「まだ期限があるから後日でよい」と考えないほうがよいです。
回線解約から持ち運びサービスの申し込みまでに空白期間ができると、その間はメールアドレスが存在しない状態になります。送られたメールは配信不能として送信元へ返り、持ち運び開始後にまとめて届くこともありません。
そのため、実務上の原則は次のとおりです。
MNPが完了したら、その日のうちにキャリアメール持ち運びを開始する。
キャリアによっては、回線解約やプラン変更と同時に申し込める場合があります。その選択肢が表示されたら、同時に申し込むほうが空白期間を作らずに済みます。
ドコモメール持ち運び
ドコモ回線の解約日から31日以内に申し込みます。MNPの手続き中に「サービス継続予約」を行える場合や、解約と同時に申し込める場合があります。
ahamoへプラン変更する場合は、原則としてプラン変更と同時の申し込みが必要です。変更後に申し込めるとは限らないため、手続き画面を読み飛ばさないようにしてください。
auメール持ち運び
au解約後31日以内に申し込みます。申し込み後は、auメール持ち運びのマイページからメールアプリの設定や、設定に必要な情報を確認できます。
ソフトバンクのメールアドレス持ち運び
ソフトバンク回線の解約後31日以内に申し込みます。ウェブのほか、ソフトバンク・ワイモバイル取扱店で申し込める場合もあります。
ソフトバンクには月額330円のほか、1メールアドレスあたり年額3,300円の料金設定もあります。
サービス内容や手順は変更される可能性があります。実際に乗り換えるときは、必ず各社の公式ページで最新条件を確認してください。
持ち運んでも同じメールアプリを使えるとは限らない
ここは、乗り換え前に本人へ説明しておきたいポイントです。
キャリアメール持ち運びで残るのは、基本的にメールアドレスとサーバー上のメールです。これまで使っていたキャリアのメールアプリまで、必ずそのまま使えるわけではありません。
たとえば、ドコモから他社へ乗り換えたAndroidスマホでは、ドコモメールアプリを利用できなくなります。GmailやOutlookなど、IMAPに対応した別のメールアプリへドコモメールを設定します。
一方、次のように公式アプリを利用できるケースもあります。
- ドコモからahamoへの変更では、条件を満たせばドコモメールアプリを継続できる
- auメール持ち運びは、対応するAndroid端末でauメールアプリを利用できる
- ソフトバンクは、Android向けに持ち運び対応の公式メールアプリを提供している
- iPhoneでは、各社の案内に沿って標準の「メール」アプリへ設定する方法が用意されている
同じキャリアでも、乗り換え先、端末、OS、アプリのバージョンによって設定方法が変わります。古い画面を参考にすると途中で項目が見つからないこともあるため、実際に設定するときは各社の公式ページで利用端末に合う最新手順を確認してください。
IMAP設定で必要になるもの
公式アプリを使えない場合は、IMAPに対応したメールアプリへアカウントを追加します。
IMAPとは、メールをサーバー上に置いたまま、スマホやパソコンから読むための一般的な仕組みです。難しい言葉を覚える必要はありませんが、設定時には次のような情報が必要になると知っておくと慌てずに済みます。
- 持ち運んだメールアドレス
- IMAP用のユーザー名、またはアカウントID
- IMAP用パスワード
- 受信メールサーバー名とポート番号
- 送信メールサーバー名とポート番号
- SSLなどのセキュリティ方式
特に間違えやすいのがパスワードです。キャリアの会員ページへログインするパスワードと、メールアプリへ入力するIMAP用パスワードが異なる場合があります。自動生成された専用パスワードを、持ち運びサービスのマイページで確認する方式もあります。
ログインパスワードを何度入力しても設定できないときは、同じものを繰り返すのではなく、「IMAP専用パスワード」「メールパスワード」という別の項目がないか公式案内を確認してください。
新旧のメールを同じアプリにまとめるか、分けるか
Gmailアプリなど、一部のメールアプリには複数のメールアカウントを追加できます。新しいGmailと、持ち運んだキャリアメールを1つのアプリにまとめることも可能です。
1つにまとめるメリットは、開くアプリを増やさずに済むことです。一方で、どちらの受信箱を見ているのか分からなくなったり、メールを送るときに差出人を間違えたりする可能性があります。
高齢の親へ説明しやすいのは、次のように役割を分ける方法です。
- Gmailなどの公式アプリ:これから使う新しいメール
- 別の対応アプリ:持ち運んだ古いキャリアメール
「普段はこちらを使う。古いほうに何か届いたときだけ家族に見せる」と決めれば、新旧の区別がつきやすくなります。
ただし、アプリが増えること自体を負担に感じる人もいます。その場合は、1つのアプリへ2つのアカウントを追加し、ホーム画面の分かりやすい場所へ置きます。本人が迷いにくいほうを家族が選びましょう。
各社の設定案内はこちらです。
乗り換え当日に確認するチェックリスト
実際の作業では、次の項目を順番に確認してください。
乗り換え前
- 今後メインにするGmailなどを決めた
- 新しいメールへログインできる
- 重要サービスの登録メールを変更した
- キャリアIDとパスワードでログインできる
- 4桁の契約時暗証番号を確認した
- キャリアIDの連絡先・復旧先をキャリア非依存メールに変更した
- 支払いに使えるクレジットカードを用意した
- 必要なメールがサーバー上にあるか、端末だけに保存されていないか確認した
- 本人へ、メールアプリが変わる可能性を説明した
MNP当日
- 新しい回線が開通した
- 古い回線が解約されたことを確認した
- 同時申し込みや継続予約をしていない場合、その日のうちに持ち運びを申し込んだ
- 持ち運びサービスの契約完了を確認した
- 新しいメールアプリまたはIMAP対応アプリへ設定した
- キャリアメールの送信と受信をテストした
- 新しいメインメールも送受信できることを確認した
乗り換え後
- キャリアメールに届いたサービスを新しいメールへ変更する
- 数か月に一度、まだ重要なメールが届いていないか確認する
- 不要になった時点で持ち運びサービスを解約する
まとめ
親がキャリアメールを長年使っていても、メールアドレスを失わずに携帯料金を見直すことはできます。
大切なのは、MNPの操作だけではありません。先にキャリア非依存のメールを決め、キャリアIDへログインできることを確認し、回線解約と同時または当日中に持ち運びを申し込むことです。
また、メールアドレスが残っても、使い慣れたメールアプリがそのまま使えるとは限りません。公式アプリを継続できるのか、別のIMAP対応アプリが必要なのかを確認し、本人が迷いにくい形に整えるところまで家族が手伝うと安心です。
キャリアメール持ち運びは、通信費を見直すための橋渡しになります。まずはメールを失わない状態を作り、その後、時間をかけて新しいメールへ移していきましょう。

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